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大阪高等裁判所 平成10年(ネ)2916号 判決 1999年5月25日

大阪市中央区南新町一丁目四番六号

控訴人(原告)

株式会社ソフト九九

コーポレーシヨン

右代表者代表取締役

田中明三

右訴訟代理人弁護士

小松陽一郎

池下利男

村田秀人

右補佐人弁理士

藤本昇

東京都中央区銀座四丁目一〇番一三号

被控訴人(被告)

株式会社 リンレイ

右代表者代表取締役

鈴木治男

右訴訟代理人弁護士

櫛田泰彦

右補佐人弁理士

大塚明博

小林保

東京都中野区鷺宮一丁目六番一三号

被控訴人(被告)

株式会社 ウイルソン

右代表者代表取締役

井本敬

右訴訟代理人弁護士

中村智廣

三原研自

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴人の当審予備的請求を棄却する。

三  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人株式会社リンレイは原判決別紙イ号意匠図面(1)記載の包装用缶を、被控訴人株式会社ウイルソンは同別紙ニ号意匠図面(1)記載の包装用缶を、それぞれ製造、販売してはならない。

三  被控訴人らは、前項記載の各包装用缶を廃棄せよ。

四  被控訴人らは、控訴人に対し、それぞれ一〇〇〇万円及び内八〇〇万円に対する平成六年一一月一一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

五  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人らの負担とする。

六  仮執行宣言

第二  事案の概要

(以下、控訴人を「原告」・被控訴人を「被告」と略称する。)

本件は、包装用缶に関する意匠権を有する原告が、自動車用ワックスを包装用缶に入れて販売している被告らに対し、(一)意匠法三七条一項・二項、三九条二項(民法七〇九条)に基づき、(二)不正競争防止法二条一項一号、三条一項・二項、四条、五条一項に基づき、いずれも被告ら製品の製造販売の差止・廃棄と損害賠償を求め、(三)当審において予備的に不法行為に基づく請求を追加した事案である。

一  前提事実、争点、争点に関する当事者の主張は、次に付加・訂正する他は、原判決四頁三行目から同七五頁一〇行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

二  不法行為に基づく請求(当審で追加された予備的請求)

原告商品とロ号商品とはその形態の特徴はほとんど同じであり、イ号商品やニ号商品もその形態の特徴はほとんど同じであるから、被告らの各商品販売行為は自由競争の範囲を逸脱するものとして不法行為を構成する。

第三  当裁判所の判断

一  本件登録意匠の特定

本件登録意匠の意匠公報に記載された図面のうち、正面図・背面図・左右側面図・B-B断面図(以下、これらを併せて「正面図等」という。)と平面図・底面図・A-A断面図(以下、これらを併せて「平面図等」という。)とでは、底面の径の寸法が異なっている(具体的には正面図等においては径が一二六mmとされているのに対し、平面図等においては径が一三六mmと作図されている)ことは争いがない。

被告らは、右寸法の相違を理由に本件登録意匠は特定することができないと主張するが、右主張は以下のとおり採用することはできない。

1  本件登録意匠は物品(包装用缶)の形状に関する意匠である。

意匠法二条一項にいう「形状」とは、物品そのものを外部から識別できる立体的あるいは平面的な外観の形をいうのであって、意匠公報に記載される図面は右外観を認識するために原則的に使用される表示方法である。

従って、意匠公報に記載された図面間に寸法の不一致等の齟齬があるときは、当業者が各図面を合理的かつ統一的に組み合せて一定の立体等を観念できるか否かによって意匠の特定の可否を決めるべきで、右の合理的かつ統一的な組み合せによってもなお物品の外観を識別できないほど齟齬が著しいときに初めて意匠の特定ができないものとして扱うべきである。

2  右の見地から本件意匠公報記載の図面をみるとき、本件登録意匠は充分に特定が可能である。すなわち、

従来、自動車用ワックスの包装用に用いられていた横幅広缶においては、上部の巻締部が缶本体より外に出ていたためキヤップホルダーを外嵌合させるに適さなかったのに対し、本件登録意匠においては、缶本体の上部にキャップホルダーを外嵌合せしめた際、該ホルダーの外周側面と缶本体の外周面が略同一になるように、缶本体の上部にテーパー面を形成するとともに、上部の外周巻締部を外周側面より缶本体内側に位置づけたことに創作の特徴があるとして、登録出願されたものである(甲六の2)。

右出願の趣旨に照らすと、本件登録意匠が当業者にとって新規であるとされたのは、主として横幅広缶を正面から見た形状であったと認められ、そうであれば、本件意匠公報記載の各図面を全体として合理的かつ統一的に組み合せて見るときは、正面図を中心として物品の形状を識別すべきであるといわなければならない。

正投象図法の基本からしても、格別の事情のない限り、正面図が作図の基礎となることは明らかである。

そして、本件意匠公報に記載された平面図にはB-B断面図の位置を示すBの符号が付されているところ、右断面図の外径は正面図の外径と一致しているのであるから、正面図と平面図における外径の齟齬は平面図を記載する際の作図の誤記と認めるのが相当である。

本件図面を右のように解釈することは、当業者にとって、極めて容易なものと認められる。

3  本件意匠公報に記載された正面図等を基礎に本件登録意匠を特定すると、次のとおりと認められる。

<1> 缶本体は、縦横の構成比が約一対二の横幅広の短円筒状で上面開口型である。

<2> 缶本体の外周側面の上端部には、内側に向かって垂直面から約四五度折れ曲がった直線状のテーパー面が形成されており、該テーパー面の垂直高さは外周側面の縦長さの約一〇分の一である。

<3> 缶本体の上部において、口金が缶本体の内側に突出するように缶本体の上端に巻締部を介して取り付けられ、かつ、該巻締部の外周は、前記テーパー部の外周より内側に設けられている。

<4> 缶本体の底部には底蓋が設けられ、かつ、該底蓋の巻締部の外周は、缶本体の外周側面と略面一に設けられている。

二  被告ら意匠の特定

1  イ号意匠

証拠(検甲一の1、二、四、五の1、検乙五、六の1・2)によれば、イ号意匠は原判決別紙「イ号意匠図面(1)」記載のとおり(但し、正面図及び缶本体1の下端巻締部7の外径は、同別紙「イ号意匠図面(2)」のとおり)であり、その構成は次のとおりと認められる。

<1>’ 缶本体1は、縦横の構成比が約一対二の横幅広の短円筒状で上面開口型である。

<2>’ 缶本体1の外周側面2の上端部には、内側に向かって垂直面から約四五度折れ曲がったテーパー面3が形成されており、該テーパー面の垂直高さは、上下両端部の巻締部を除く缶本体1の外周側面2の縦長さ全体の約二〇分の一である。

<3>’ 缶本体1の上部において、口金4が缶本体1の内側に突出するように缶本体1の上端に巻締部5を介して取り付けられ、かつ、該巻締部5の外周は前記テーパー面3の外周及び缶本体1の外周側面2より僅かに内側に設けられている。

<4>’ 缶本体1の底部には底蓋6が設けられ、かつ、該底蓋6の巻締部7の外周は、缶本体1の外周側面2より若干大径に設けられている。

<5>’ 缶本体1の上面開口部には、口金4の内周面に着脱自在な円形の缶蓋10が装着されている。

2  ロ号意匠

原判決別紙ロ号意匠図面(争いがない)及び検甲一の3によれば、ロ号意匠の構成は次のとおりと認められる。

<1>’ 缶本体1は、縦横の構成比が約一対二の横幅広の短円筒状で上面開口型である。

<2>’ 缶本体1の外周側面2の上端部には、内側に向かって垂直面から約三〇度折れ曲がったテーパー面3が形成されており、該テーパー面の垂直高さは、上下両端部の巻締部を除く缶本体1の外周側面2の縦長さ全体の約一〇分の一である。

<3>’ 缶本体1の上部において、口金4が缶本体1の内側に突出するように缶本体1の上端に巻締部5を介して取り付けられ、かつ、該巻締部5の外周は前記テーパー面3の外周及び缶本体1の外周側面2より僅かに内側に設けられている。

<4>’ 缶本体1の底部には底蓋6が設けられ、かつ、該底蓋6の巻締部7の外周は、缶本体1の外周側面2と略面一に設けられている。

<5>’ 缶本体1の上面開口部には、口金4の内周面に着脱自在な円形の缶蓋10が装着されている。

3  ニ号意匠

証拠(検甲一の5、三、五の2、検丙四ないし六)によれば、ニ号意匠は原判決別紙「ニ号意匠図面(1)」のとおりであり、その構成は次のとおりと認められる。

<1>’ 缶本体1は、縦横の構成比が約一対二の横幅広の短円筒状で上面開口型である。

<2>’ 缶本体1の外周側面2の上端部には、内側に向かって垂直面から約三〇度折れ曲がったテーパー面3が形成されており、該テーパー面の垂直高さは、上下両端部の巻締部を除く缶本体1の外周側面2の縦長さ全体の約一五分の一である。

<3>’ 缶本体1の上部において、口金4が缶本体1の内側に突出するように缶本体1の上端に巻締部5を介して取り付けられ、かつ、該巻締部5の外周は前記テーパー面3の外周及び缶本体1の外周側面2より僅かに内側に設けられている。

<4>’ 缶本体1の底部には底蓋6が設けられ、かつ、該底蓋6の巻締部7の外周は、缶本体1の外周側面2と略面一に設けられている。

<5>’ 缶本体1の上面開口部には、口金4の内周面に着脱自在な円形の缶蓋10が装着されている。

三  本件登録意匠と被告ら意匠の類否

1  本件登録意匠と被告ら意匠の前記各構成を対比すると、次のような共通点と相違点があるということができる。すなわち、

(一)(1) 缶本体は、縦横の構成比が約一対二の横幅広の短円筒状で上面開口型であること(<1>と<1>’)

(2) 缶本体の外周側面の上端部に内側に折れ曲がったテーパー面が形成されていること(<2>と<2>’)

(3) 缶本体の上部において、口金が缶本体の内側に突出するように缶本体の上端に巻締部を介して取り付けられ、かつ、該巻締部の外周は、前記テーパー部の外周より内側に設けられていること(<3>と<3>’)

(4) 缶本体の底部には底蓋が設けられ、該底蓋に巻締部が設けられていること(<4>と<4>’)の各点においてはすべてに共通の構成を有している。

しかし、

(二) イ号意匠においては、

(1) テーパー面が外周側面(垂直面)から缶本体の内側に向かって約四五度の折れ曲がりを形成している点では本件登録意匠と共通しているが、

(2)(イ) テーパー面の垂直高さが、上下両端部の巻締部を除く缶本体の外周側面の縦長さ全体の約二〇分の一である点、

(ロ) 缶本体上端部の巻締部の位置が、缶本体外周側面より僅かに内側である点、

(ハ) 底蓋の巻締部の外周が、缶本体の外周側面より若干大径に設けられている点

(ニ) 缶本体の上面開口部には、口金の内周面に着脱自在な円形の缶蓋が装着されている点

でそれぞれ本件登録意匠と相違しており、

(三) ロ号意匠においては、

(1) テーパー面の垂直高さが、上下両端部の巻締部を除く缶本体の外周側面の縦長さ全体の約一〇分の一である点では本件登録意匠と共通しているが、

(2)(イ) テーパー面が外周側面(垂直面)から缶本体の内側に向かって約三〇度の折れ曲がりを形成している点、

(ロ) 缶本体上端部の巻締部の位置が、缶本体外周側面より僅かに内側である点、

(ハ) 缶本体の上面開口部には、口金の内周面に着脱自在な円形の缶蓋が装着されている点

でそれぞれ本件登録意匠と相違しており、

(四) ニ号意匠においては、

(イ) テーパー面が外周側面(垂直面)から缶本体の内側に向かって約三〇度の折れ曲がりを形成している点、

(ロ) テーパー面の垂直高さが、上下両端部の巻締部を除く缶本体の外周側面の縦長さ全体の約一五分の一である点、

(ハ) 缶本体上端部の巻締部の位置が、缶本体外周側面より僅かに内側である点、

(ニ) 缶本体の上面開口部には、口金の内周面に着脱自在な円形の缶蓋が装着されている点

でそれぞれ本件登録意匠と相違している。

2  公知意匠あるいは周知意匠の参酌(本件登録意匠の効力)

本件登録意匠は昭和五九年八月に出願され平成五年四月に登録されたことは争いがない。

(一) 本件登録意匠は、前記のとおり、缶本体が縦横の構成比が約一対二の横幅広短円筒状で上面開口型であることを構成要素とするところ、甲六の一(無効審判請求書)に添付の「自動車用ケミカル読本一一巻九号(昭和五二年八月発行)」《原審記録三六八丁以下》・「同一二巻一二号(昭和五三年九月発行)」《原審記録三七五丁以下》・「同一三巻一三号(昭和五四年九月発行)」《原審記録三八〇丁以下》によれば、当時すでに固型ワックスの包装用缶に、縦横の構成比が約一対二で横幅広短円筒状の上面開口型の缶本体が広く使用されていたことが窺われるから、本件登録意匠に用いられた右の構成自体はありふれた形状であって格別新規なものでなかったことが認められる。

(二) また、本件登録意匠は、缶本体の外周側面の上端部に内側に折れ曲がったテーパー面が形成されていることを構成要素とするが、丙七(「月刊パッケージング(昭和五三年一〇月発行)」《原審記録五五三丁》・丙八(「月刊パッケージング(昭和五九年一月発行)」《原審記録五五八丁裏以下》・丙一〇(「一九八四年パッケージデザイン総覧(昭和五九年一月発行)」・丙一一(ネックドイン缶のパンフレット)によれば、当時、ネックドイン缶と呼ばれる縦長円筒缶においては、すでにキャップを缶本体に嵌合し易くするため、缶本体の外周側面の上端部に内側に折れ曲がったテーパー面を形成して、缶本体の上端巻締部の外径を小さくすることが一般化していたことが認められる。

従って、右テーパー面の形成という構成も、それ自体は広く利用されている形状であって格別新規なものではなかったということができる。

(三) さらに、本件登録意匠は、缶本体上部の口金が缶本体内側に突出するように缶本体上端に巻締部を介して取り付けられ、かつ、該巻締部の外周は、前記テーパー部の外周より内側に設けられていること、缶本体の底部に底蓋が設けられ、該底蓋に巻締部が設けられていること、という各構成も有しているが、これらの構成も前記(1)に掲記の各証拠によれば、当時すでに固形ワックス缶において一般に広く利用されていた形状であったことが認められるから、これらの点も格別新規な構成ではなかったということができる。

(四) 右のように、本件登録意匠の構成のうち被告ら意匠と共通する構成部分は、いずれも本件登録意匠の出願当時広く一般に利用されていた形状であるから、本件登録意匠が当業者にとって新規な部分は、縦横の構成比が約一対二の横幅広円筒状缶において、缶本体の上端部に、巻締部を除く缶本体の外周側面の縦長さ全体の約一〇分の一の垂直高さを有するテーパー面を形成し、そのテーパー面が外周側面(垂直面)から缶本体の内側に向かって約四五度の折れ曲がりを形成している点と、缶本体の底蓋の巻締部の外周が缶本体の外周側面と略面一に設けられている点とにあるというべきである。

3  本件登録意匠の侵害の成否

一般に、物品の形状に関する登録意匠とそれに対する侵害意匠との類否を判断するには、取引者又は需要者から見て美感を同じくし物品の混同を生じるか否かにより決すべきであるが、登録意匠が意匠権として保護されるのはあくまで当該意匠に新規な創作部分が含まれるからであって、そうであれば当該意匠の新規な創作部分の大小によって保護されるべき権利の範囲も自ずから異なって然るべきである。登録意匠の構成のすべてが公知意匠あるいは周知意匠で占められ、その組合わせのみに新規な創作性があるような場合には、その組合わせとほぼ同一といえる対象意匠についてのみ意匠権の効力を及ぼすことができるというように、保護の範囲は必然的に小さいものとならざるを得ない。

従って、登録意匠の構成の大半が公知意匠あるいは周知意匠からなるがそれ以外に新規な創作部分も認められるような意匠については、右創作部分に相応する限度での保護が与えられるとするのが相当である。そして、具体的な侵害の成否は、取引者又は需要者が通常有する美感を基準として右新規な創作部分と侵害意匠とを対比することにより、物品の用途・通常の使用形態等に照らしてなお物品の混同を生じるか否かによって判断すべきである。

右の見地から本件について検討するに、本件登録意匠において新規な創作部分は前記のとおりである。

本件登録意匠は包装用缶に係る意匠であり、包装用缶は取引者又は需要者が手に取って使用するものであるから、取引者又は需要者は物品の形状を至近距離から側面や上面を中心に全体的に観察するのが通常と考えられる。

そうとすると、本件登録意匠におけるテーパー面の垂直高さと折れ曲がり角度の点、及び底蓋の巻締部の外周と缶本体の外周側面とが略面一に設けられている点とは、包装用缶の側面視において美感上重要な比重を占めるものということができる。

これに対し、被告ら意匠は、(1)イ号意匠では、テーパー面の垂直高さが外周側面の縦長さ全体の約二〇分の一である点、底蓋の巻締部の外周が、缶本体の外周側面より若干大径に設けられている点で、(2)ロ号意匠では、テーパー面の折れ曲がり角度が約三〇度である点、缶本体上端部の巻締部が缶本体外周側面より僅かに内側である点で、(3)ニ号意匠では、テーパー面の折れ曲がり角度が約三〇度である点、テーパー面の垂直高さが缶本体外周側面の縦長さ全体の約一五分の一である点などでそれぞれ相違しているのであり、これらの相違点からみて、本件登録意匠の構成と異なる被告ら意匠は、取引者又は需要者が通常の美感に照らして観察するとき物品の混同を生じさせるものではないというべきである。

四  してみると、原告の意匠権に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がなく棄却すべきである。

五  不正競争防止法に基づく請求

当裁判所は、原告の不正競争防止法に基づく請求は理由がないものと認定判断するが、その理由は、原判決一〇四頁八行目から一一四頁初行までに記載のとおりであるから、これを引用する。

六  不法行為に基づく請求

原告商品の形態は原判決一〇六頁四行目から同一〇七頁五行目までに記載のとおりであるところ、被告ら商品もほぼこれに類した形態を採用していることが認められる(甲一一、検甲一の1ないし7、三、四、五の1・2、六、検丙一ないし六)。

しかし、原告商品も被告ら商品もともにその構成の大半は従来から広く一般に利用されていた包装用缶の形態を取り入れたものであることは、前記三2で認定したとおりであって、被告らが被告ら商品を製造販売するにあたって原告商品の形態をそのまま完全に模倣したとの事実までは認めるに足る証拠がない。のみならず、被告ら商品が原告商品を完全に模倣したとの一事のみで直ちに不法行為が成立すると解することもできない。

従って、被告ら商品の販売が自由競争の範囲を逸脱したもので不法行為を構成するとは認めることができず、この点に関する原告の請求も理由がない。

第四  結論

以上の次第で、原告の請求を棄却した原判決は結論において相当であるから、本件控訴は棄却すべきであり、原告の当審追加請求も理由がなく棄却すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成一一年三月九日)

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 山田陽三)

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